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News Report
No.5
急速に普及?新型贈与「相続時精算課税制度」
その有利な活用法は何かを探る!(後編)
−相続時精算課税制度の傾向と相続税対策(後編)−
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2004年11月18日
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1.相続時精算課税制度とは?(前編)
2.贈与を受けた人は、申告期限までに!(前編)
3.相続時精算課税制度はどのくらい普及しているのか?(前編) |
4.いろいろな活用法が検討されているが… |
相続時精算課税制度を使った相続税対策がいろいろと考えられています。不動産オーナーの方の相続税対策なら「アパート等の賃貸物件の生前贈与」、会社オーナーの方の事業承継対策なら「自社株の生前贈与」がその代表的な例です。ポイントは、「収益を生むもの」または「将来値上がりするもの」を贈与することです。
今回は、会社オーナーの方の事業承継対策に有効な、相続時精算課税制度を活用した自社株の生前贈与を中心にお話したいと思います。財務省の「平成15年分 相続時精算課税制度に係る贈与税の申告実態調査」(相続時精算課税制度の傾向と相続税対策(前編)参照)からも、この制度が事業承継対策として利用されていることがわかります。
では、さっそくみてみましょう。
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5.自社株の生前贈与(会社オーナーの事業承継対策) |
相続時精算課税制度を活用するポイントの一つである将来値上がりするものを贈与する場合に、会社オーナーの方ならば、自社株の贈与がすぐに浮かんでくるのではないでしょうか。相続時精算課税制度導入以前からあった110万円控除の暦年贈与制度の場合には、贈与財産の額が増えれば増えるほど贈与税の金額も増えてしまいました。そのため、父から後継者の子へ自社株を生前贈与するには、多額の贈与税の負担を覚悟しなければなりませんでした。また、自社株を子へ譲渡しようとしても、子は購入資金がネックとなり、実行不可能なケースも多かったのです。ところが、これらの問題を相続時精算課税制度は解決してくれました。2,500万円をオーバーした贈与をしても、一律20%の課税で済むのです。たとえば、自社株が現在1億円の株価のときに贈与し、それが将来3億円に上昇したときに相続が開始すると、相続税の税率が40%の場合には、8,000万円の違いが生じてくることになります。
もちろん、自社株が必ず上がるという保証はありません。さらに、相続はいつ発生するのか、そのとき税制がどうなっているのか、といった心配はあるでしょう。しかし、相続時精算課税制度を活用した自社株の贈与を、事業承継対策の選択肢の一つとして加えてみる価値は十分にあると思います。
相続時精算課税制度を選択した贈与により取得した自社株は、相続が開始したら精算されるのですが、「特定受贈同族会社株式等の特例」を使うことができます。この制度は、一定の要件を満たす場合には、株式の相続税評価額(10億円を上限)が1割引される規定です。平成14年に創設されてから、平成15年、平成16年とオーナーの方に有利な改正が続けてなされています。また、宅地等の相続税の評価額が大幅に割引かれる「小規模宅地等の特例」と組み合わせて節税することもできます。実行にあたっては、届出関係等忘れないようにご注意ください。
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6.こんな自社株の生前贈与もあります(65歳未満の会社オーナー必見?) |
これから、相続時精算課税制度の意外な活用法についてお話をします。弊社のお客様だけでなく、読者である会社オーナーの方にもお役立ていただければ幸いです(とは言っても、ごく一部のオーナーの方にしか利用できないのですが…。)。
相続時精算課税制度を活用して、会社オーナーの方が自社株を子に贈与しようと考えた場合、親は65歳以上、子は20歳以上といった年齢制限がネックになる場合がでてきます(1 相続時精算課税制度とは? 参照)。もしかしたら、子は25歳だが自分はまだ55歳なので自社株の贈与は無理だと諦めていませんか?会社の株式の評価方法が「類似業種比準価額方式」といって、会社に利益が発生すると株価が上昇してしまう状況で、「これからも株価がどんどん上昇してしまうだろう」、「株式公開も視野に入れるところまで見えそうなのに」「なんで親は65歳以上でなければだめなのか?今、まだ株価が低いときに贈与したいのに…」とお悩みの会社オーナーの方はいらっしゃいませんか?
そこで対策として考えられるのが、住宅取得資金の贈与の特例です。これは、既にご説明したように、2,500万円にプラス1,000万円の3,500万円まで贈与税がかからない相続時精算課税制度です。もともとの趣旨は住宅取得促進で、事業承継とは関係がないのですが、これを活用すると親の年齢制限はなくなってしまいます。
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7.こんな自社株の生前贈与もあります(続き) |
それでは、具体例をあげて説明しましょう。
親は55歳、子は25歳。親が子に住宅取得資金1,000万円の贈与をして、子は住宅取得資金の贈与の特例(相続時精算課税制度)を選択。さらに、その翌年、親は子へ自社株式1億円を贈与しました。
この場合、子は住宅取得資金の贈与の特例について相続時精算課税制度を選択しているため、翌年の自社株の贈与については暦年贈与制度に戻ることはできません。その結果、親の年齢制限がなくなり、さらに2,500万円の控除の枠を使うことができます。枠を超えた部分については、一律20%の課税で済みます。これで、将来、自社株の価格が上昇しても、贈与時の価格で相続財産を計算することになります。たしかに、子は住宅を取得しなければなりません。しかし、年齢制限だけ何とかできるのならば、相続税対策として自社株を贈与したいと考えている会社オーナーの方もいらっしゃると思います。ちなみに、この住宅取得資金の贈与の特例は、平成17年12月31日までの贈与により取得する金銭に対して適用されます。実行するためには、当然、株価引下げの対策後の贈与となることから、時間はあまりないかもしれません。現行制度のまま延長されかどうかについて、今後の税制改正に注目です。
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8.相続時精算課税制度に係る贈与税の申告実態調査からみると… |
相続時精算課税制度の「住宅取得資金の贈与の特例」を使い、年齢制限を受けずに自社株の生前贈与を実際に実行した人はいたのでしょうか?
財務省の申告実態調査の第5表に、非上場株式等の贈与者・受贈者年齢別階層という表があります。これによると、65歳未満の贈与者が非上場株式を贈与した人数は4人となっています(ちなみに上場株式の方は2人いました。)。この4人の取得財産は合計7億円なので、1人当たり1億7千5百万円の自社株の贈与を受けたことになります(このことは、まだあまり知られていないようです。)。
ところで、上場株式等の贈与も結構ありました。詳細はわからないのですが、この中には、最近流行の証券化商品なども入っているのでしょうか?また、今、新聞紙上を賑わせている○○鉄道ではないけれど、上場廃止問題が発生!なんてことになったら、上場株式を生前贈与しなければよかったなんてことにも…。相続時精算課税制度を活用した相続税対策に、「絶対」はあり得ないということでしょうか。
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9.相続時精算課税制度の今後 |
不動産オーナーの方の相続税対策としてアパート等の賃貸物件の生前贈与についても触れたかったのですが…。ほんの少しだけ触れると、不動産所得の多額な不動産オーナーの方の場合には、不動産を所有する不動産管理法人を活用したスキームがあります。したがって、安易に賃貸物件を生前贈与することについては、個人的にはあまりお勧めいたしません。
ところで、相続時精算課税制度は「相続税対策」より「相続対策」など税金対策以外の活用法がいろいろあります。「生前相続」などという言葉を聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。文字通り、相続が開始する前に、相続時精算課税制度を使って生前に遺産分割をしてしまう方法です。生前であれば、親は子に対して、その配分について、直接その趣旨を説明することができます。子の方も、場合によっては今の3,000万円の贈与の方が、20年後に相続で4,000万円取得するよりもずっと有難いといって親に感謝し、その配分について文句を言わないケースもあるでしょう。「相続税の心配はないが、相続で揉めないで欲しい」と願う親にとっては、相続時精算課税制度を使った生前贈与と遺留分の放棄を活用すれば、遺言書の作成が不要になるケースも出てきます。
このほか詳述いたしませんが、法律家の間で検討されているものに、(1)株主代表訴訟や債権者対策から個人財産を保全する目的で、相続時精算課税制度を活用する方法(もちろん、詐害行為取消権の問題はあるのですが…)、(2)債務超過の可能性がある場合に相続放棄に先立って贈与する方法、などが検討されています。これから益々相続対策の観点から、相続時精算課税制度の利用が重視されていくことでしょう。
相続時精算課税制度は、2,500万円まで贈与の時点では課税されません。しかし、いざ相続となったときに贈与を受けた子が、その財産をすべて消費してしまった場合には、納税資金に困ることになります。また、相続財産を子が取得しなかった、或いは、少ししか取得しなかった場合には、相続税は連帯納付義務があるため、他の相続人との新たな相続問題に発展する可能性があります。まだ、制度として新しい相続時精算課税制度ですが、相続税の問題を抱える不動産オーナーや会社オーナーの方々にとっては、成功も失敗も自己の判断が非常に問われる制度に変わりありません。
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