アメリカの外資系企業を中心として、外国親会社が日本の子会社の役員等に対して外国親会社のストック・オプションを付与した場合に、その行使利益については、従前、「一時所得」とされていた。ところが、その後、課税庁は一時所得の申告を否認して給与所得とする更正処分を行った。つまり、課税当局者の一時所得とする解説書の見解を信頼して過去数年にわたり一時所得として申告していた納税者に対し、格別の税制改正によることなく、給与所得として申告額の約倍額に近い課税が行われ、納税者の予測可能性がないがしろにされたということである。さらに、平成10年分のみならず、平成8年分の申告まで遡及して更正処分を行い、同時に過少申告加算税について賦課決定処分を行ったのである。これを発端として、国税不服審判所の裁決を待たずに訴訟が提起され、その後、相次いで同様の訴訟が提起され、いわゆるストック・オプション税務訴訟に発展し、現在に至っている。
外国親会社から日本子会社の役員等に付与されたストック・オプションの行使利益を、従前の課税当局者による一時所得との見解を撤回してまで、なぜ、平成8年分以降のストック・オプションの行使利益が給与所得に当たるという法解釈がなされたのか。行使利益の所得区分を明らかにするとともに、租税法律主義について考えてみたい。
No.1 最近のストック・オプション税務訴訟の判決について思うこと。(2004/8/6)
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